ISM非製造業景気指数──「50.1」が意味するもの

指標

2025年8月5日、全米供給管理協会(ISM)が発表した7月の非製造業景気指数(サービス業PMI)は、市場予想51.5に対し、結果は50.1と、予想を大きく下回る数字となりました。

この結果は、景気拡大・縮小の分岐点である「50」ギリギリかろうじて維持した形であり、市場参加者の間では「景気後退リスクの足音が聞こえ始めた」との見方が広がっています。

経済指標の“読み方”がわかると…

ISM指数(PMI)は、景況感を「50」を基準として、

  • 50を上回ると「景気拡大」
  • 50を下回ると「景気後退(リセッション)」

…と評価されることが多いです。

注目すべきは、市場予測測と結果の差(=サプライズ)、と前月からの数値の移行です

先月(6月)は「予測=結果」で市場の反応も落ち着いていましたが、 今月(7月)は 「予測より1.4ポイントも下振れ」。 これにより、「やっぱり景気は鈍っているのでは?」という見方が強まりました。
以下、直近3ヶ月の非製造業景気指数(サービス業PMI)を抜粋いたします。

直近3ヶ月の推移(市場予測と結果)

年月市場予測結果
2025年5月52.049.9
2025年6月50.850.8
2025年7月51.550.1

6月は予測通りだったものの、今回7月分は市場予測から1.4ポイントも下振れ、前月の結果からは0.7ポイントの下げとなりました。これは、緩やかな景気減速の兆しと見なされる可能性があります。

なぜ市場は「50.1」に敏感に反応するのか?

ISMの非製造業指数は、米国GDPの7割以上を占めるサービス部門の動向を反映しており、その分岐点である「50」を割り込むと、景気後退の兆候と判断されやすくなります。

実際には「50.1」となんとかプラス圏を保ったものの、市場予想(51.5)からの乖離が大きく、「サービス業を含めた産業活動に陰りが見え始めた」との警戒感を与えました。

雇用サブ指数にも注目

今回、注目されたのは総合指数だけでなく、「雇用」サブ指数の弱さです。

サービス業での雇用拡大が停滞する傾向が見られれば、今週末に控える米雇用統計にも影を落とすことになり、FRBの政策判断にも影響を及ぼします。

“50.1”が持つ市場インパクト

ISM非製造業景気指数の“50割れギリギリ”という結果は、市場にも一定の波紋を与えました。

📉 株式市場・ドル相場の反応

指数発表直後、株式市場では一時的な下落が見られました。 「サービス業の減速=企業収益悪化の予兆」と捉えられたためです。

また、ドル円はわずかに下落。景気鈍化が利下げ観測につながるとの読みが広がり、ドル売りが優勢になりました。

📉 債券利回りの低下/長短金利差の変化

米10年債利回りは3.5bps程度の低下。景気減速による「安全資産買い」が債券価格を押し上げ、利回りは下落しました。

また、長短金利差(2年債と10年債)はやや縮小傾向。 これは「短期的に利下げ余地が広がった」ことを示唆する動きともいえます。

⚠️ 雇用統計への波及も

今回のISM非製造業景況指数には雇用サブ指数の弱さも反映されているとの指摘があります。

これにより、「週末の雇用統計も悪化するのでは?」という先読み的な動きが強まり、 今後の非農業部門雇用者数(NFP)発表への注目度が一段と高まりました(先月の「数値ゲタ履き事件がありましたが…)

<まとめます>

  • 株式市場:ダウ平均とS&P500はやや軟調。利下げ期待が出たものの、景気悪化懸念が勝り、買いは限定的。
  • ドル相場:一時的にドル安へ。特にユーロや円に対して下落。
  • 債券市場:米10年債利回りは低下。長短金利差もやや拡大し、逆イールドの状態を強める方向に。
  • 雇用統計への影響:サービス業の雇用が弱含んだ場合、雇用統計の「非農業部門雇用者数」も弱くなる可能性。

今後の展開と裏読みポイント

この「50.1」という数値は、“分岐点をかろうじて保った”という意味では一見耐えているように見えますが、市場の予測からのズレ幅が大きいことの方が深刻です。

このズレが何を示しているか──

  • 企業の見通しが急速に悪化している?
  • FRBの利下げタイミングが想定より前倒しになる?
  • ドル・株・債券、それぞれの資金の流れに変化?

指標の“数値そのもの”だけでなく、予測との差異に注目することが、今後の相場を読む鍵になります。


🗣️ GP君の一言まとめ

予測は「景気回復」に傾いてたのに、出てきたのは「成長ギリギリ」… ってことは、「見えてる景気」と「感じてる景気」の肌感覚にズレがあるってことかも!?

🧠 ふかちんの裏読み

経済指標は、数字そのものよりも「市場予測とのズレ」と「前月からの数値がどう移行しているか?」が重要なんだ。 そのギャップが、企業心理や政策期待の変化を映していると言えるね。
今回のISMも、“静かなる警告”として受け取っておきたいね。

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