──続報と人事の背景
※ 2025年8月13日更新
※ この度、英文記事から記事を作成し、英語読みでの日本語を記載しましたが、スティーブン・ミランで他のニュースサイトで統一しておりますので、弊ブログも訂正しアップデートを致します
導入
前回記事「FRB理事クーグラー辞任──次に誰が来る?」で触れた空席人事に、動きがありました。
トランプ大統領は、新たな理事候補としてスティーブン・ミラン(Stephen Miran)氏を指名しました。
ただし、今回の任命は暫定的とみられており、マーケット関係者からは「なぜこの人なのか?」「なぜ暫定なのか?」という点に注目が集まっています。
ミラン氏の簡易プロフィール
- 氏名:スティーブン・ミラン(Stephen Miran)
- 経歴:トランプ政権期の財務省上級顧問として市場政策を担当
- 専門:債券市場・金融政策・規制緩和
- 所属:現在は民間投資会社のパートナー
- 政策スタンス:金利引き下げや規制緩和に前向き、やや政権寄り
- 特徴:FRBの独立性よりも経済成長重視の発言が目立つ
この経歴からもわかる通り、ミラン氏はトランプ大統領の経済方針と親和性が高い人材です。
ニュース概要
今回の指名は2025年8月6日に発表されました。市場関係者の間では、「seat warmer(つなぎ役)」説が有力視されています。
これは、正式な長期任期ではなく、特定のタイミング(今回なら来年2月まで)の短期任命を意味します。
FRB常任理事の任期は最長14年と長く、途中退任しても空席や残任期枠で再登用できる制度。
これが、トランプ流“再登場人事”の土台になっています。
正式就任には上院の承認が必要で、承認プロセスやスケジュールによっては9月のFOMC会合後に着任となる可能性もあります。
経歴の中で特筆すべきは、元財務省上級顧問としてトランプ政権の経済政策に関わった経験、金利引き下げ志向、そしてFRBの独立性よりも経済成長を優先する発言歴です。これらが「政権寄り」とみられる理由です。
豆知識コーナー:『FRB理事になるための流れ』
- 大統領による指名(今回はトランプ大統領)
- 上院銀行委員会での公聴会(経歴・政策方針の確認)
- 上院本会議での承認投票(過半数で可決)
- 正式就任・任期開始(通常14年任期/暫定任期もあり)
- 議長・副議長は理事の中から大統領が再指名→上院承認
※残任期の引き継ぎや暫定任命のケースもあり、今回のミラン氏はこの典型例とみられます。
裏読み視点
今回のミラン氏は、当ラボの「議長本命リスト」には入っていません。
しかし、トランプ政権では過去の人事が再登場することは珍しくなく、今回もその流れに沿っていると考えられます。
この背景には、大きく2つの狙いが見えます。
- トランプ色の強化:政権方針に近い人物を理事会に送り込み、金融政策決定の場で政権寄りの意見を増やす。
- 反対分子の排除:政権方針に異を唱える可能性のある人物を減らし、議決バランスを掌握する。
ミラン氏のスタンス(金利引き下げ・規制緩和寄り)とトランプとの距離感(元政権顧問で信頼関係あり)を合わせて考えると、今回の人事は「なぜトランプの影響力が増すのか?」という問いに対する、きわめて説得力のある答えになります。
市場や議会の受け止め
発表直後の市場は、短期任命の可能性を織り込みつつも大きな混乱は見せず、金利先物市場では来年2月以降の本命人事を見据えた取引が中心となりました。
議会では共和党寄りの議員から概ね好意的な声が上がる一方、民主党側からは「FRBの独立性が損なわれかねない」との懸念も表明されています。