──CPI、関税休戦、FRB人事の“都合よすぎる三拍子”+生活インフレ3%続行中
7月度の米国CPIが発表され、主要報道機関の記事・解説もほぼ出揃いました。
しかし、ふかちん&GP君としては、まずこのグラフを見て欲しいのです。
実は世の中のニュースには、「コア指数(変動が大きい食料・エネルギー除いた数値)」だけを抽出したグラフは 実はほとんど見当たりません。
けれど、この折れ線を見れば──何が起きているか一目瞭然です。


右肩下がりを続けてきたコアCPIは、2025年6月の 2.9% をボトムに反転し、7月は 3.1% に上昇しました。
CPIの数字だけ見れば「インフレ鈍化順調」ですが、実生活ベースの物価は3%台が続行中です。
それでも市場は「9月利下げは規定路線」という雰囲気に支配されています。
「利下げは既定路線」などと、簡単に言ってしまって良いのでしょうか──。
3種類のCPIとは?
総合CPI(Headline CPI)
消費者が購入するあらゆる品目(食料、エネルギー、商品、サービス)を含む物価指数。
生活全体の物価動向を示す指標で、変動の大きい食料やエネルギー価格の影響を強く受ける。
コアCPI(Core CPI)
総合CPIから「食料」と「エネルギー」を除いた物価指数。
FRBや市場がインフレ基調を判断する際に重視される。長期的な物価の方向性を把握しやすい。
コアコアCPI(Core-Core CPI)
コアCPIからさらに「住居費(家賃・持ち家帰属家賃)」を除いた物価指数。
住居費は統計上タイムラグが大きいため、それを除外して短期的な変化を敏感に捉える狙いがある。
日本で多用されるが、米国でも分析補助として使われる場合がある。
※今回は、コアCPIの話です
都合よすぎる“三拍子”
- 総合CPI下振れ:前年比2.5%(予想2.5%)で「鈍化」物語を後押し。
- 米中関税休戦延長:90日延長で当面の関税引き上げ回避、株式市場に安心感。
- FRB人事の報道:利下げ寄りの名前が並び、市場の期待を強化。
この三拍子が同じタイミングで揃えば、「9月利下げ確定」という空気になるのは自然です。
ですが、これらが偶然同時に起きたのか、それとも市場心理を誘導するための“材料セット”なのか──ここは見極めが必要です。
見落とされがちな現実
- コアCPIはむしろ加速:予想3.0%に対し3.1%。6月から反転上昇。
- 生活インフレ3%続行:食料・エネルギーを除いても基礎コストがなお高止まり。
- 利下げは両刃の剣:景気刺激の一方で、物価再加速の火種にもなり得る。
市場は“良い材料”ばかりをつまみ食いしているようにも見えます。
本来、FRB/FOMCはヘッドラインだけでなくコアの動きを重視しています。
インフレ再燃リスク
FOMCが掲げるインフレ目標は2%。
しかしコアCPIは、2025年6月の2.9%を底に反転し、7月は3.1%に加速しました。
この局面での利下げは、需要刺激を通じて再び物価を押し上げる危険性があります。
過去の事例を見ても、1970年代や2021〜2022年初期の米国では、早すぎる利下げがインフレ再燃を招いたケースが存在します。
今回の「都合よすぎる三拍子」は短期的に市場を安心させる一方で、中長期では再び高インフレ局面へ逆戻りするシナリオも否定できません。
裏読みの結論
「9月利下げは規定路線」という見方は、今回の三拍子が作り出した都合の良いストーリーかもしれません。
実生活ベースではインフレは収束しておらず、金融政策はなお慎重であるべき局面。
ふかちん&GP君は、今の市場の浮かれ具合には、一歩引いて向き合うべき…だと考えます。
GP君:「総合CPI下がったし、関税も延長、議長候補も利下げ派ばかり…もう9月利下げは間違いないでしょ?」
ふかちん:「そう思わせる“材料セット”が揃ってるのは確か。でも、コアCPIが3.1%に上がってるのを忘れちゃいけない。」
GP君:「あ…実生活の物価はまだ3%台か。」
ふかちん:「そう。景気刺激は市場が喜ぶけど、物価再加速のリスクもある。そこをどう見るかが本当の勝負なんだ。」