2026年2月第2週 数字は静か、だが構造は揺れる──米主要指標とベージュブックが示す“均された安定”の正体(CPI・雇用統計・小売・中古住宅・US10Y分析)

米国政治
  1. ◾️ はじめに
    1. 「数字は静かだった。しかし、構造は静かではない」
  2. ◾️ 指標整理:2月第2週の米主要指標まとめ
    1. CPI(消費者物価指数)
    2. 雇用統計
    3. 雇用コスト指数(ECI)
    4. 小売売上高
    5. 中古住宅販売
    6. 全体像
  3. ◾️ なぜ市場は落ち着いているのか
    1. ① インフレが「再加速」していない
    2. ② 失業率が跳ねていない
    3. ③ 賃金は暴走していない
      1. FRBは急がなくていい
  4. ◾️ ベージュブックは違う顔を見せる
    1. 中西部:製造業の減速
    2. 西部:住宅の鈍化
    3. 南部:賃金圧力は持続
    4. 東部:サービスは強いが、コスト上昇
    5. 全米平均では見えない「温度差」
  5. ◾️ 地域差が意味するもの
    1. ① 企業の価格転嫁力は地域で違う
    2. ② 労働需給は州ごとに別世界
    3. ③ 金利の影響は住宅市場から波及
    4. FRBは「平均」を見る
    5. 均された安定の裏側にある、ばらつき
  6. ◾️ 金融市場への影響分析
    1. ① 株式市場
    2. ② 為替市場
    3. ③ 貴金属
  7. ◾️ US10Yとの接続
    1. 10年債は4%台で下がらない
    2. ① 市場は利下げを急がせていない
    3. ② 長期金利は「均衡」の水準にいる
    4. ③ 債券市場は「未来の急変」を否定している
    5. 債券市場は「時間」を買っている
  8. ■ 構造整理:ソフトランディングか、それとも横滑りか
    1. 注意点
    2. ソフトランディングと横滑りの違い
    3. 今の局面を一言で言えば
    4. ソフトランディングか横滑りか?見極めポイント
    5. ミニまとめ
  9. ◾️ FRBはこの構造の中で何を選ぶのか
    1. ミニまとめ
  10. ◾️ まとめ
    1. ふかちんの一言
  11. 出典一覧
    1. ■ 米国主要経済指標
      1. CPI(消費者物価指数)
      2. 雇用統計(NFP / 失業率 / 平均時給)
      3. 雇用コスト指数(ECI)
      4. 小売売上高
      5. 中古住宅販売
      6. ベージュブック(地域差分析)
      7. ■ 連銀総裁発言(ハマック、ローガン)
      8. ■ 米10年債利回り
      9. ■ 為替(USD/JPY)

◾️ はじめに

「数字は静かだった。しかし、構造は静かではない」

結論
今回の米経済指標は、表面上は落ち着いて見えます。
しかし、その内側では“温度差”が広がりつつあります。
安定に見える数字の裏で、構造はゆっくりと動いています。


2月第2週に発表されたアメリカの主要経済指標は、いずれも「極端」ではありませんでした。

  • CPI(消費者物価指数)は鈍化
  • 雇用は予想を上回る強さ
  • 小売売上高は横ばい
  • 住宅市場は急減

数字だけを並べれば、「崩れていない」「過熱もしていない」という印象になります。
いわゆる“ソフトランディング”の道筋に見えなくもありません。

市場も大きくは動揺していません。
債券市場は落ち着き、株式市場も過度に悲観している様子はありません。

一見すると、非常に穏やかな週だったと言えます。

しかし――

構造を見ると、話は少し違ってきます。

インフレは鈍化していますが、賃金は完全には落ち着いていません。
雇用は強いものの、住宅は明確に失速しています。
消費は止まり、投資は慎重になっています。

つまり

「悪くない」ことと、「強い」ことは同じではありません。

今回の指標群は、経済が安定していることを示しているように見えます。
ですが、それは、「均された平均値」がそう見せているに過ぎない可能性があります。

全米平均は静かです。
けれども、その内側には地域差、業種差、資金の流れの偏りといった“構造のズレ”が存在しています。

数字は落ち着いています。しかし、経済の重心はゆっくりと移動しています。

今回の記事では、この「静かな数字」と「静かではない構造」のズレを、丁寧に解きほぐしていきます。

では、まず事実関係を冷静に整理していきましょう。

◾️ 指標整理:2月第2週の米主要指標まとめ

結論
インフレは鈍化しています。
雇用は強さを維持しています。
しかし、消費と住宅は明確に減速しています。

これは「強い経済」ではなく、
“均された安定” と言える状態です。


では、順番に整理していきましょう。


CPI(消費者物価指数)

  • 前月比 0.2%(予想0.3%)
  • 前年比 2.4%
  • コア前年比 2.5%

前月比は予想を下回り、前年比もじわりと低下しています。
コア指数も落ち着きつつあり、インフレは確実に鈍化方向にあります。

急低下ではありませんが、「再加速していない」ことは重要です。
FRBにとっては、少なくとも追加的な引き締めを急ぐ状況ではありません。


雇用統計

  • NFP(非農業部門雇用者数) +13万人(予想7万人)
  • 失業率 4.3%
  • 平均時給 前月比 0.4%

雇用者数は予想を大きく上回りました。
失業率も急悪化はしていません。

平均時給は0.4%とやや強めです。
労働市場は、はっきりと崩れているとは言えません。

「景気後退入り」というにはまだ材料不足です。


雇用コスト指数(ECI)

  • 前期比 +0.7%

前回0.8%からやや減速しました。
賃金インフレはピークアウト傾向にあります。

平均時給はやや強いものの、
より包括的なECIは落ち着いてきています。

つまり、賃金の“爆発的加速”は起きていない。

これはインフレ再燃リスクを抑える材料になります。


小売売上高

  • 前月比 0.0%
  • コアも 0.0%

消費は止まり気味です。
落ち込んではいませんが、勢いはありません。

実質所得の伸びが限定的である中、家計は慎重になっている可能性があります。

「強い消費」という物語は、ここでは見られません。


中古住宅販売

  • 前月比 -8.4%

住宅市場は明確に減速しています。
高金利の重さが、はっきりと出ています。

住宅は金利の影響を最も受けやすいセクターです。
ここが弱いということは、金融環境の引き締まりが効いている証拠でもあります。


全体像

  • インフレは鈍化
  • 雇用は崩れていない
  • 賃金はピークアウト傾向
  • 消費は横ばい
  • 住宅は減速

一つ一つを見ると、どれも極端ではありません。

しかし、力強い回復でもありません。

強いところと弱いところが混在し、
平均値で見ると「安定」に見える。

これが今回の特徴です。

次章では、この「均された安定」の内側にある
“構造のズレ”に踏み込んでいきます。

◾️ なぜ市場は落ち着いているのか

結論(ミニ)
インフレは制御圏内。
雇用は崩れていない。
賃金も暴走していない。

だからこそ――
FRBは急ぐ必要がありません。


今回の指標群を並べると、不思議な感覚になります。

  • CPIは鈍化方向
  • 失業率は4%台前半で安定
  • 賃金はやや強いが制御可能な範囲
  • 住宅は弱いが、金融システム不安はない

極端な数字がないのです。


① インフレが「再加速」していない

マーケットが最も恐れるのはインフレの再燃です。

しかし今回のCPIは、予想を下回る前月比0.2%。
前年比も低下方向です。

「また上がるのではないか」という恐怖は、今のところ確認されていません。

これは大きな安心材料です。


② 失業率が跳ねていない

次に恐れられるのは急激な雇用悪化です。

しかし失業率は4.3%。
歴史的に見ても、急激な悪化とは言えません。

雇用者数は予想を上回り、労働市場は“減速”ではなく“冷却”の範囲にとどまっています。
景気後退の入り口にいるとは言い切れない状態です。

※ 但し、今後の改定値には気を付けなければなりません。


③ 賃金は暴走していない

平均時給は0.4%とやや強めでしたが、雇用コスト指数は減速しています。

賃金インフレが制御不能な水準にあるわけではありません。

FRBが最も警戒する「賃金スパイラル」は、現時点では観測されていません。


FRBは急がなくていい

これが最大のポイントです。

  • 利上げを急ぐ理由もない
  • 利下げを急ぐ理由もない
  • 緊急対応も不要

つまり、政策を考察する余地の時間がある ということです。

マーケットはこれを理解しています。

パニックとは「時間がない」と感じたときに起きます。

しかし今は違います。

悪くも良くもない。
危機でも、過熱でもない。

ですから市場は、ボラティリティではなく、ポジション調整で対応しているのです。


「悪くも良くもない」

この中間地点こそが、中央銀行にとって最も扱いやすい領域です。
そしてマーケットは、その余白を静かに評価しています。

次章では、この“時間がある政策環境”が、どこに歪みを生むのかを見ていきます。

◾️ ベージュブックは違う顔を見せる

ここからが本題です。

CPI、雇用、小売――
今回の主要指標は、全米を均した“平均値”です。

しかしベージュブックは、
12地区それぞれの現場の声を拾います。

そこには、はっきりとした地域差が存在しています。


中西部:製造業の減速

中西部では、製造業活動の鈍化が目立ちます。
受注の伸びは弱く、在庫調整の動きも見られます。

全米NFPは強い。
しかし製造業の現場では、空気はやや冷えています。

これは「数字に出る前の変化」の可能性もあります。


西部:住宅の鈍化

西部では住宅市場の減速が鮮明です。
高金利の影響が、最も直接的に表れている地域の一つです。

今回の中古住宅販売 -8.4%。
この数字の裏側には、地域ごとの“金利耐性の差”があります。

住宅は金利の影響を最も受けやすい分野です。
そして地域ごとの価格水準が、影響の強弱を分けています。


南部:賃金圧力は持続

南部では労働需給がなお逼迫しています。
人手不足が続き、賃金上昇圧力も残っています。

雇用コスト指数は減速しました。
しかし地域によっては、まだ賃金圧力が消えていません。

全米平均では「落ち着き」に見えても、
局所的には火種が残っているのです。


東部:サービスは強いが、コスト上昇

東部ではサービス業が底堅い一方、
コスト上昇への言及が目立ちます。

価格転嫁は進んでいるが、
それは同時に“価格の粘着性”を意味します。

インフレは鈍化方向。
しかし、完全に鎮静化したわけではありません。


全米平均では見えない「温度差」

今回の指標は、確かに安定を示しました。
しかしベージュブックは、静かな歪みを示唆しています。

均された数字は滑らかです。
しかし現場の景色は、滑らかではありません。


ミニ結論
数字は均します。
しかし、現場は均されません。
そこに“温度差”があります。

◾️ 地域差が意味するもの

FRBは「平均」を見ます。
しかし企業と生活者は「地域」を生きています。

このズレが、将来の政策難易度を上げます。


① 企業の価格転嫁力は地域で違う

大都市圏では価格転嫁が可能。
しかし地方では難しい。

同じ「インフレ率2.4%」でも、企業の収益環境はまったく違います。

価格を上げられる企業と、上げられない企業。
この差は、時間とともに利益格差を広げます。

平均値では見えません。


② 労働需給は州ごとに別世界

南部では人手不足。
中西部では減速気味。

失業率4.3%という数字は、州単位で見ればばらつきがあります。
労働市場は“全国一律”ではありません。

賃金上昇圧力が残る地域では、インフレの火種は消えません。

一方で、弱い地域では賃金は伸びません。

この分断は、平均では消されます。


③ 金利の影響は住宅市場から波及

金利は住宅を直撃します。
そして住宅は消費に波及します。

住宅が弱い地域では、家具・家電・建設雇用にも影響が出ます。

今回の中古住宅急減は、単なる住宅指標ではありません。
地域経済の循環速度を落とす可能性があります。


FRBは「平均」を見る

ー企業と生活者は「地域」を生きている

ここに構造的な難しさがあります。

平均では安定。
しかし地域では温度差。

これはパニックの種ではありません。
しかし将来の政策判断を複雑にする要因です。


均された安定の裏側にある、ばらつき

市場が今静かなのは、このばらつきがまだ“制御可能”と判断しているからです。

しかし――
温度差は、いつか平均値ににじみ出てきます。

次章では、その歪みがどのように金融市場に映るのかを見ていきましょう。

◾️ 金融市場への影響分析


今回の指標群は、明確な方向性を示しませんでした。

  • インフレは鈍化方向
  • 雇用は強い
  • 消費は横ばい
  • 住宅は急減

この組み合わせは、典型的な景気転換点の前兆とは異なります。

では金融市場はどう受け止めたのでしょうか。


① 株式市場

株式市場はパニックにも高揚にもなっていません。

理由は明確です。

  • インフレ再燃ではない
  • 景気崩壊でもない
  • FRBが慌てる局面ではない

つまり、「政策リスク」が拡大していないのです。

ただし、セクター間の温度差は強まります。

  • 住宅関連:重い
  • 金利感応度の高い銘柄:選別
  • ディフェンシブ:底堅い

指数は安定しても、内部では再配置が進んでいます。


② 為替市場

ドルは急騰も急落もしていません。
一見すると、金利差の物語がそのまま続いているように見えます。

しかし、実際はジワジワとUSD/JPYでは円高に動くなど、わずかな変化が起きています。

連銀総裁らの発言を整理すると、共通するトーンは明確です。
先ずは、連銀総裁のインタビューを要約したモノを確認下さい。

■ ハマック・クリーブランド連銀総裁
• インフレは依然高いが、2026年にかけて緩和する見通し
• 金利は「かなり長期間」据え置かれる可能性
• インフレ・労働市場ともに上下リスクは残存
• 金利の道筋は上振れ・下振れリスクがほぼ均衡
• 現在の政策スタンスは状況を見極める上で「良好な位置」
• 金利政策では「忍耐強く待つ」選択を重視 • 見通しは改善し、労働市場は安定化傾向

■ ローガン・ダラス連銀総裁
• インフレ鈍化の継続に期待
• 追加利下げを支持するには、労働市場の「明確な悪化」が必要
• 現時点では利下げを急ぐ理由は見当たらないとの立場

お二人の共通項は明確に:
・忍耐
・インフレは鈍化方向
・しかし利下げを急ぐ状況ではない
・リスクは均衡
と、話しています。

ポイントとしては、先に挙げたベージュブックの章でも書きましたが、 連銀側の共通認識は「インフレは落ち着きつつあるが、利下げを急ぐ局面ではない」 リスクは上下に均衡しており、政策は忍耐強く見極める段階にある。金融政策は“動かない自由”を確保するフェーズを確保している状態に入っている、という風に読めます。

通常であれば、高金利の継続はドル高要因になります。
しかし今回は、「高金利が続くかどうか」よりも、その持続可能性に市場の視線が向かっています。

実際、円は急騰することなく、じわりと水準を切り下げました。
これは投機的な動きというよりも、ポジション調整の色合いが強い動きです。

米国側で制度や政策の安定性に対する市場の感応度が高まる一方、日本側は目立った政策変更がなく、政治イベントも通過しました。


為替は相対評価で動きます。


米国の不確実性がわずかに増し、日本が静かな状態にあるならば、ドルが少し弱含むのは自然な流れです。

ただし、これは全面的な制度不信ではありません。
ポジションの偏り調整や実質金利の動きなど、複合要因も背景にあります。

株は高値圏、債券利回りは高止まり。
その中で為替だけが先に動き始めたことは、市場が金利水準そのものよりも、構造的な持続性を見始めている可能性を示しています。

今回の円高は、円が強くなったというよりも、ドルの持続力に対する再評価が始まった動きと見る方が自然です。

全面的な制度不信というより、市場が一部リスクを織り込み直している可能性があります。

株は高値圏、債券利回りは高止まり。
その中で為替が先に動き始めたことは、相場が“水準”ではなく“構造”を見ている証拠とも言えます。

まとめます。
上記の構造部分とは別のドル安要因

  • ポジションの偏り調整
  • 欧州通貨の反発
  • 原油価格動向
  • 実質金利の微調整

つまり“制度不信”一本ではなく、複合要因という事は常に頭にいれておかなければなりません。


③ 貴金属

ゴールドは、一度1000ドルほど落ちましたが、これはポジション調整と利確。
上へ頭抜けしない、ハイテク株の決算不調等を受け、NY時間開始と同時に売られたものです。
そこからは持ち直し、崩れていません。

これは重要です。

  • 高金利環境でも金が強い
  • 株が安定しても金が売られない

つまり市場は「全面的に楽観していない」

ということです。

安心はしている。
しかし信用は一極集中していない、といったところでしょうか。


◾️ US10Yとの接続

結論(ミニ)
債券市場は「時間」を買っています。
焦りも、歓喜もありません。


10年債は4%台で下がらない

ここが今回の核心です。

  • CPIは鈍化
  • 住宅は弱い

それでも長期金利は大きく低下しません。

これは何を意味するのでしょうか。


① 市場は利下げを急がせていない

もし景気後退が近いなら、10年債はもっとズルズルと下がります。

しかし下がらない。

つまり、

  • クラッシュは織り込んでいない
  • 早期利下げも織り込んでいない

FRBに“時間”を与えている状態です。

但し、米連邦政府の債権乱発により、プレミアム感は薄れ、金利を上乗せしないと「売れ残ってしまう」という現象は、現実問題としてあります。


② 長期金利は「均衡」の水準にいる

4%台前半は、インフレ鈍化と成長維持の中間地点です。

市場はこう見ています。

  • 景気は減速するが崩壊しない
  • インフレは落ちるが消えない

だから利回りは動かない。


③ 債券市場は「未来の急変」を否定している

債券市場は最も先を読む市場です。

そこが静かであることは「今は急変局面ではない」というメッセージでもあります。


債券市場は「時間」を買っている

FRBに時間。
企業に時間。
市場に時間。

これが今の構図です。


■ 構造整理:ソフトランディングか、それとも横滑りか

【ミニまとめ】
クラッシュではありません。
再加速でもありません。
「横ばい成長の再確認」です。


今回のデータは、三つの否定を示しています。

✔ 景気崩壊ではない
✔ インフレ再燃でもない
✔ 急回復でもない

これは典型的な“横滑り局面”です。


注意点

住宅は先行指標です。

  • 住宅が崩れる
    → 建設雇用が減る
    → 家具・家電需要が減る
    → 消費が鈍る

住宅は景気の波及点です。

今は住宅が弱い。雇用はまだ強い。
この“時間差”が重要です。


ソフトランディングと横滑りの違い

ソフトランディング
→ 成長は維持しながらインフレ沈静

横滑り
→ 成長は弱いまま停滞

今回のデータは、後者寄りなのが気になります。
ただし、崩れてはいない、というのが分析結果です。


今の局面を一言で言えば

「壊れていない停滞」

市場はそれを受け入れています。

だからパニックにならない。
だから熱狂もしない。


この構造が崩れるとすれば、

  • 住宅悪化が雇用に波及
  • 賃金鈍化が消費を直撃
  • あるいは地政学ショック

そのどれかです。

今はまだ、その段階ではありません。

ソフトランディングか横滑りか?見極めポイント

今回のデータは、クラッシュを示してはいません。
しかし、力強い再加速も示していません。

インフレは鈍化方向にあり、雇用は維持されている。
一方で、住宅は減速し、消費も勢いを失いつつあります。

これは「成功したソフトランディング」なのでしょうか。
それとも、「横滑り状態」なのでしょうか。

見極めるポイントは三つあります。

第一に、住宅市場です。
住宅は金利の影響を最も直接的に受けます。
ここがさらに弱含むようであれば、雇用への波及は時間差で表れます。
住宅→建設→関連消費→雇用、という順番です。

第二に、賃金の持続性です。
賃金が安定的に伸び続けるなら、消費は底割れしません。
しかし、企業の価格転嫁力が弱まる中で賃金だけが高止まりすれば、利益率に圧力がかかります。

第三に、地域差の広がりです。
ベージュブックが示す温度差が拡大するなら、
全米平均は安定していても、局所的な冷え込みが増えていく可能性があります。

ソフトランディングとは、減速しても崩れない状態です。
横滑りとは、崩れはしないが前進もしない状態です。

現在のデータは、その中間にあります。

市場はまだ結論を出していません。
むしろ、「結論を急がない」という選択をしているように見えます。


ミニまとめ

米国経済は崩れていません。しかし、均一でもありません。
狭い日本でも、都心部と地方部では差が有ります。国土の広い米国、その地域差は日本以上に深刻なのです。

◾️ FRBはこの構造の中で何を選ぶのか

マーケットが見ているのは“水準”ではなく“ズレ”

今回のデータは、どれも極端ではありませんでした。
CPIは鈍化し、雇用は強く、小売は横ばい、住宅は減速。
数字だけを並べれば、危機でも過熱でもない「中間点」にあります。

しかしマーケットが見ているのは、水準そのものではありません。
数字同士の“ズレ”です。

まず、CPIと賃金の関係です。
インフレは鈍化方向にありますが、平均時給は依然として底堅い伸びを示しています。
これは「価格の勢いは弱まっているが、賃金圧力は完全には消えていない」状態です。


このズレは、FRBにとって判断を難しくします。


インフレは安心できる水準に近づいているものの、賃金が再加速すれば物価も再び押し上げられる可能性があるからです。

次に、雇用と小売の関係です。
雇用者数は増え、失業率も急悪化していません。
それにもかかわらず、小売売上は横ばいです。
働いている人は多いのに、消費が伸びない。
ここにも小さな違和感があります。
これは「雇用の質」や「可処分所得の実感」が、数字ほど強くない可能性を示唆します。

さらに、全米平均と地域差の問題です。
全国の平均値は安定を示していても、ベージュブックでは明確な12連銀の各地域による温度差が報告されています。
製造業が減速している地域もあれば、賃金圧力が残る地域もある。
住宅市場の冷え込みも、地域ごとに濃淡があります。

指標は1つしか出されません。結果、平均値は全体を滑らかに見せます。
しかし、現場は決して均されません。

マーケットが敏感になるのは、この“均された数字”と“現場の体感”の間にズレが生じるときです。
ズレが広がると、政策の難易度は一段と上がります。
利下げをすれば賃金圧力が再燃するかもしれない。
据え置けば住宅と消費がさらに冷えるかもしれない。

政策当局は平均を見ます。
しかし、企業や家計は地域を生きています。

この二つの視点が離れ始めたとき、市場は静かにポジションを調整し始めます。


ミニまとめ

市場が恐れるのは水準そのものではありません。
数字同士のズレが広がることです。市場は楽観しているのではなく、慎重に様子を見ています。

FRBはどう見るか?利上げ・利下げに収まらない、どのような政策を取っているのか?
楽観視せずに見ていく必要があるでしょう。


◾️ まとめ

今回の指標群は、危機を示してはいませんでした。
インフレは制御可能な範囲に近づき、雇用も急悪化していません。

しかし、消費と住宅の減速は確かに存在しています。
そしてベージュブックが示す地域差は、平均値の裏側にある現実を映しています。

FRBは急がなくてよい時間を得ました。
しかし、それは「安心」ではなく「猶予」です。

債券市場は時間を買い
為替は持続性を測り
株式は崩れない範囲で推移しています。

市場は楽観しているのではありません。
悲観しているわけでもありません。

ただ、今は結論を出さずにいるのです。


ふかちんの一言

米国経済は崩れていない。
しかし、均一でもない。

市場は安心しているのではない。
「様子見を選択している」だけなのです。


出典一覧

■ 米国主要経済指標

CPI(消費者物価指数)

  • U.S. Bureau of Labor Statistics (BLS)
    Consumer Price Index – January 2026

雇用統計(NFP / 失業率 / 平均時給)

  • U.S. Bureau of Labor Statistics (BLS)
    Employment Situation – January 2026

雇用コスト指数(ECI)

  • U.S. Bureau of Labor Statistics (BLS)
    Employment Cost Index – Q4 2025

小売売上高

  • U.S. Census Bureau
    Advance Monthly Retail Trade Report

中古住宅販売

  • National Association of Realtors (NAR)
    Existing Home Sales Report

ベージュブック(地域差分析)

  • Federal Reserve Board
    Beige Book – January 2026

(本誌記事参照)
2026年1月 ベージュブックから米国経済を読み解く
https://urayomi-news.com/2026/01/19/beige-book-frb-zure-2026/


■ 連銀総裁発言(ハマック、ローガン)

  • Federal Reserve Bank of Cleveland
    President Beth Hammack – Public Remarks
  • Federal Reserve Bank of Dallas
    President Lorie Logan – Public Remarks

(発言要旨は各連銀公式サイトおよび主要通信社報道を参照)


■ 米10年債利回り

  • U.S. Department of the Treasury
    Daily Treasury Yield Curve Rates

■ 為替(USD/JPY)

  • Bloomberg / Reuters Market Data
    (市場終値ベース、日次推移)

※本分析はニュース解釈であり、特定の投資行動を推奨・勧誘するものではありません。
将来の結果を保証するものではなく、内容は変更される可能性があります。
詳しくは、免責事項を参照下さい

プロフィール
fukachin

運営者:ふかや のぶゆき(ふかちん)|
1972年生まれ、東京在住。
ライター歴20年以上/経済記事6年。投資歴30年以上の経験を基に、FRB・地政学・影響分析・米中経済を解説。詳しくは「fukachin」をクリック

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