前文: 今回の記事を書き終えて
今、米国マーケットを見ていて違和感は感じはないでしょうか?
私は言葉にしにくいモヤモヤを感じています。
FOMCでは意見が割れている。
ベージュブックは地域ごとの温度差を示す。
それでも株式市場は高値圏にあり、金利は高止まりしながらも、じわりと低下する局面もある。
ゴールドは強いが、一方向ではなく乱高下。
ドルは力強さを保ちながらも、明確な方向性を示さない。
整合性が取れてない様な気がするのです。
何かスッキリせず、のどに小骨が刺さっているのです。
物語が一本にまとまらないのです。
もし、同じような感覚を抱いている方がいるなら、本稿はその違和感が少しだけスッキリするかもしれません。小骨が取れるかもしれません。
そして本稿を、10年後の私と、未来のマーケット関係者に贈ります。
2026年2月 ふかちん&GP君の裏読みラボ 主幹:ふかちん
テーマ: 米ドルはどこに向かうのか?
金利でも株でもなく、最終的に市場が見ているのはここです。
まずは整理
今の相場は少し奇妙です。
- 金利は高い
- 株は強い
- ゴールドも強い
- でもドルは強くない
普通なら
高金利=ドル高
になるはず。でも今はそう単純じゃない。
ドルの行き先は3つしかない
① 再び一強(ドル高回帰)
条件:
- 米景気が再加速
- インフレ再燃
- FRBが引き締め継続
この場合:
→ ドルは再び王様
ただし今はその兆しは薄い。
② 緩やかなドル安(構造調整)
条件:
- 利下げは急がないが、ピークは越えた
- 米国の双子の赤字
- 政治ノイズ増加
- 他国が相対的に静か
これは今一番近いシナリオ。
ドルは崩れないが、少しずつ“特別扱い”を失う。
③ 信認揺らぎ(荒れるシナリオ)
条件:
- 財政拡張+政治介入
- インフレ再燃
- 債券市場の反乱
この時:
金利↑
ドル↓
金↑
株も不安定
いわゆる「制度への再評価」ここまで行けば荒れます。
今どこにいるのか?
今は②の入り口。
市場はまだ
「ドルを捨てる」とは言っていない。
でも
「無条件で信じる」とも言っていない。
実はドルは“強い通貨”ではなく“比較通貨”
ドルは単独で強いわけではない。
比較対象が弱いから強く見える。
- ユーロは構造問題
- 円は金融政策制約
- 中国は資本規制
だからドルは王座にいる。
でももし「相対的にマシ」ではなくなったら?話は変わります。
ふかちん的に見ると
今の相場は
水準ではなく、持続性を見始めた相場。
ドルは暴落していない。でも“上がる理由”も弱くなっている。
米ドルは急騰でも急落でもない。
ゆっくりと「無敵通貨」から「普通の基軸通貨」へ戻る可能性がある。
本当に荒れるのは「ドルが弱い」時ではなく「ドルが守れない」時。
そこまではまだ行っていない。
でも正直に言うと、市場が金を買いながら株も買い、ドルを全力で買わない時。
それは、静かに構造が変わり始めている時。
ここ、今一番面白い地点です。
今起きている可能性
それは
「ドル一強トレンドの終焉」
ではなく
「ドル一強“再配分”のスタート」
です。
どういうことか?
これまで(2022〜2024)
・米国だけが強かった
・インフレも強かった
・金利も圧倒的に高かった
・他国は弱かった
→ 何も考えなくてもドル買い
いわば、“思考停止ドルロング相場”
今(2026)
・米国はまだ強い
・でも減速の兆し
・利下げは急がないがピークは越えた可能性
・政治ノイズが増加
・財政赤字は拡大
→ ドルは「自動的に買う通貨」ではなくなった
ここが転換点。
だから今の相場はこうなる
✔ 株も買われる
✔ 金も買われる
✔ 債券利回りは高止まり
✔ ドルだけ強くない
これは
“信認の再配分”
です。
重要ポイント
ドル一強の終焉 ≠ ドル崩壊
これは全然違う。
今はまだ
- 基軸通貨の地位は揺らいでいない
- 代替通貨が存在しない
でも
「ドル以外を持つ理由」が増え始めている。これが本質。
ふかちんの直感
感じているのは多分これ:
リーマン以降続いた“安全資産=ドル一択”の時代が、静かに終わりかけている空気
これは構造の匂い。数字ではなく、空気。
マーケットに感じている違和感。ただ、それは崩壊の匂いではなく、再編の匂い。
前提
ドル制度が崩壊したら、世界の金融システムは同時に揺れます。
なぜなら:
- 世界の貿易決済の中心がドル
- 原油・コモディティの価格基準がドル
- 各国中銀の外貨準備の中核がドル
- グローバル債務の大半がドル建て
つまりドルは
通貨というより「金融OS」
だから。
OSが落ちたらアプリ(株・債券・為替・商品)は全部止まる。
では本当に「ドル制度崩壊」が起きたら何が起きる?
理論上は3パターンあります。
① デフレ型クラッシュ
- ドル信用収縮
- 流動性蒸発
- 株急落
- コモディティ暴落
- 新興国通貨崩壊
これは2008年リーマンの拡大版。「ドル不足」が起きる。
この場合コモディティも一旦売られます。
なぜなら現金(ドル)確保が最優先になるから。
② インフレ型崩壊(信認崩壊)
- 国債暴落
- 金利急騰
- 金急騰
- ドル急落
- 実物資産暴騰
これは1970年代型。
ただしこれは
米国政府が財政規律を完全に失い、FRBが機能しなくなった場合
に限る。今はまだここではない。
③ 制度再編型(最も現実的)
- ドルは弱含む
- 他通貨も強くない
- 金がじわじわ上昇
- 株は選別的
- 債券は不安定
つまり
崩壊ではなく「支配構造の薄まり」
今はここに近い。
重要なこと
ドルが崩壊するには:
- 米国債市場の機能停止
- FRBの政策不能
- 代替通貨の成立
この3つが必要。今はどれも起きていない。
コモディティはどうなる?
ドル崩壊=コモディティ暴騰とは限りません。
最初に起きるのは
流動性ショック
なので、一旦全部売られる可能性が高い。その後、信認が崩れれば金だけが残る。
今起きていることは?
✔ 金利高い
✔ 株高い
✔ 金高い
✔ ドル弱い
これは崩壊相場ではない。
これは
信用の分散
なのです。
■ 本章導入:違和感の提示
改めて前文からスタートします。
今の米国マーケットを見ていて、どこか引っかかる感覚はないでしょうか。
FOMC議事録では意見の分裂が示唆され、
ベージュブックでは地域ごとの温度差が浮き彫りになる。
それでも株式市場は高値圏を維持し、
長期金利は高止まりしながらも、わずかに低下する局面がある。
ゴールドは強いが一直線ではなく、乱高下を繰り返す。
ドルは強いとも弱いとも言い切れない、方向感を欠いた動きです。
一つひとつを見れば説明は可能です。全てファンダ的に論理的に説明がつきます。
しかし、全体として並べると、どこか噛み合わない。
本来なら、
- 金利が高いならドルは強い
- 株が強いなら金は弱い
- 景気が減速するなら株は売られる
そうした“教科書的な整合”が、仮に一時的に崩れても、時間が経過すれば、クロ的には成立するはずです。
崩れてはいない。しかし、きれいにも収まっていない。
ところが今は、それがきれいに揃わない。
この「ズレ」こそが、いま最も重要な観測点なのです。
違和感と自問自答
今の市場は崩れていない。しかし、整合してもいない。
それが最大のヒントである。
今の違和感の正体
感じているのはたぶんこれです。
ドルが弱いのに、崩壊している感じはない
それは信用がまだ崩れていないから。
本当に見るべきもの
✔ ハイイールドETF(HYG / JNK)の値動き
✔ BBB格のスプレッド
✔ 銀行株の相対パフォーマンス
✔ CDX指数
これが崩れ始めたら、温度が変わる。
結論
クレジットスプレッドが静かなら、まだこれはドル一強の修正局面と考えるのが正論でしょう。
広がり始めたら制度ストレスの入口となり、資産再配分の局面とといえるでしょう。
■ FOMC議事録の本質
今回の議事録を読んで違和感を覚えた人は少なくないはずです。
利上げも否定しない。
利下げも否定しない。
強いとも弱いとも言わない。
しかし、これは優柔不断ではありません。
これは高度なポジショニングです。
① なぜ「割れている」ように見えるのか
議事録には、明確に両サイドの意見が存在します。
- インフレ再燃なら引き締めも辞さない
- 景気減速なら緩和も必要
- 労働市場は強いが、先行きは不透明
一見すると、コンセンサスが無いように見えます。
しかし本質は違います。
→ 意見が割れているのではない。リスクが二方向に開いているだけ。
FRB内部で対立しているのではなく、経済の分布が二極化している。
そう仮定すると、前回私が書いた記事「2026年2月第2週 数字は静か、だが構造は揺れる──米主要指標とベージュブックが示す“均された安定”の正体」の「均された数値」と「地域差」と完全にリンクしてくるのです。
② FRBが守っているもの
今回、最も重要なのはここです。
FRBは何を守ったのか?
- 金利水準ではない
- 株価でもない
- 為替でもない
守っているのは、“政策の可逆性(reversibility)”です。
つまり、どちらにも動ける状態を維持すること。
これを壊すと、中央銀行は一気に市場に飲み込まれます。
③ なぜ「時間」が最大の武器なのか
中央銀行にとって最大の資産は金利ではありません。
時間です。
時間があるということは、
- インフレが再燃しても対応できる
- 景気が悪化しても対応できる
- 政治圧力をかわす余裕がある
時間を持てるということは、制度がまだ信認されているという証拠。
逆に、急ぐ必要がある=制度が疑われている。
です。
今は急いでいない。だから市場も崩れない。
実は「方向性」はすでに決まっているのではないか?
ここがディープな部分です。
逆説的な考え方ですが「方向を決めないこと自体が、方向」と考える事は出来ないか?と、いう事です。
FRBは明確にこう言っています。
「我々はデータ次第で動く」
これは中立ではありません。これは市場に対する牽制です。
もし市場が
- 早期利下げを織り込めば
- 株を過熱させれば
- 金利を過度に低下させれば
その瞬間にFRBは、一気にタカ派になる事ができます。
逆も同じ。
→ FRBは今、市場のボラティリティを管理している。
⑤ 「判断を先送り」ではない
軽く見える最大の理由はここです。
判断を先送りしているのではありません。
判断を“保留できる状況”を作っている。
これは大きな違いです。
先送りは消極的。保留は戦略的。
⑥ なぜ株が崩れないのか
FRBが方向を固定しないことで、市場は安心します。
なぜなら、
- 急激な引き締めは来ない
- 急激な緩和も来ない
=サプライズ・極端なシナリオが消える
ファンダでは、可能性が高い箇所にリスクを置きつつ、万が一のサプライズの可能性も崩しはしません。但し、サプライズ・極端なシナリオの可能性が極めて低くなれば、思考から一旦保留する事が出来ます。これは大きい。
市場は方向よりも、テールリスクの消滅に反応します。
⑦ 本質的な違和感の正体
ここで最初の違和感に戻ります。
株は高い
金利は高止まり
ドルは弱含み
ゴールドは強い
これは整合しない。
しかし議事録をディープに読むと、一つの答えにたどり着きます。
→ 市場はFRBを信じているが、
→ 経済の分布は信じ切れていない
だから全面的なリスクオンにならない。
ミニまとめ
FRBは方向を示さなかったのではない。
「どちらにも動ける余白」を守った。と、考えるのが自然ではなかろうか。
それは不安の表れではなく、FRBがマーケットに対して「まだ時間を持てている」という証拠ではなかろうか。
■ ベージュブックとの温度差
――平均が隠す、地域経済の実像
FOMC会合2週間前に発行されるベージュブック。
ベージュブックは、各連銀で取材された「現場の生の声(一次取材)」が反映されている訳ですが、ベージュブック(2週間前)ーFOMCー議事録(3週間後)と、必ず時差が発生します。
ミニまとめ
全米平均は整っています。
しかし、地域の経済は整っていません。このズレこそが、今の市場の違和感の正体です。
FOMC議事録は「余白」を語りました。
では、ベージュブックは何を語っているのでしょうか。
ベージュブックは、統計ではありません。現場の声です。
企業、金融機関、地域の事業者から集められた“肌感覚””一次情報”です。
そこに現れているのは、整った数字とは少し違う、各連銀内で起こっているリアルな景色です。
■ 中西部:製造業の減速
中西部では、製造業活動の減速が報告されています。
受注の鈍化、在庫調整、慎重な設備投資姿勢。
これは、金利水準の影響が時間差で波及している兆候と読むことができます。
全米平均の雇用は強い。
しかし、製造の現場ではブレーキがかかり始めている。
平均は“まだ”崩れていません。
しかし、地域では“既に”変化が始まっています。
■ 南部:賃金圧力の持続
一方、南部では労働需給の逼迫と賃金上昇圧力が続いています。
人手不足が続き、企業は賃上げで対応。
これはインフレ圧力の持続要因です。
CPIは鈍化方向。
しかし賃金の現場では、完全に緩んだとは言えない。
ここに「CPI vs 賃金」の小さなズレがあります。
■ 西部:住宅市場の減速
西部では住宅市場の鈍化が目立ちます。
金利の高さが直撃し、取引件数が減少。
建設関連の動きも慎重になっています。
中古住宅販売の急減という統計と、現場の声は整合しています。
しかし住宅は、雇用に遅れて波及するセクターです。
今は平均雇用が強い。
しかし、住宅の鈍化が続けば、いずれ労働市場にも影響が出る可能性があります。
■ 東部:サービスは強いがコスト上昇
東部ではサービス業が比較的堅調です。
ただし同時に、コスト上昇への言及もあります。
価格転嫁が可能な企業と、難しい企業の差が広がっている。
つまり
成長はある。
しかし、利益の質は均一ではない。
→ 経済指標で見えてくる全米平均は整う。
→ しかし、 地域は整っていないし、エリアによっては地域全体が疲弊している。
ここが本質です。
FOMCが見るのは全米平均。
金融市場が最初に反応するのも平均値。
しかし、企業と生活者が生きているのは地域です。
FRBは“全体最適”を目指します。しかし経済は“部分最適”の集合体です。
その間に、どうしてもズレが生まれます。
ミニまとめ
数字は平均されてしまい、無機質なものに変えてしまいます。
仮に「コアCPI 2.5%」という数字が出されたら、それはどこまでいっても2.5%なのです。
しかし、実体経済は均されません。
平均は安心を与えます。地域差は、将来の変化を示唆します。
そして市場は、この「まだ顕在化していないズレ」を感じ取ったとき、初めて動きます。
今はまだ、その手前かもしれません。
しかし、温度差は確実に存在しています。
■ ズレが拡大すると政策は難しくなる
ズレが小さいうちは、FRBは「平均値」で運転できます。
しかしズレが広がると、同じ政策が“誰かに効きすぎ、誰かに効かない”状態になります。
その瞬間、政策は「正しさ」よりも「副作用」の管理に変わります。
いま市場が感じている違和感は、単に「景気が強い/弱い」ではありません。
CPI、賃金、雇用、消費、住宅、そして地域差が、同じテンポで動いていない。
ここにあります。
FRBの政策は、基本的に“全国一律の金利”です。
しかし経済は、全国一律ではありません。
- 住宅が効きすぎる地域
- 賃金が落ちない地域
- 製造が先に冷える地域
- サービスが粘る地域
こうした温度差がある状態で、政策を動かすと何が起きるか。
利上げでも利下げでも、必ず「当たりすぎる層」が出ます。
そして「当たらない層」も残ります。
だから市場は、こう見ます。
FRBが迷っているのではない。
経済の“ズレ”が、FRBを迷わせる構造になっている。
ここがポイントです。
政策当局が最も嫌うのは、方向性の議論より、
「政策の効果が均一でなくなること」です。
- CPIが落ちても賃金が粘る
- 雇用が強くても消費が止まる
- 平均は整っても地域は歪む
このズレが拡大すると、FRBは動きにくくなります。
だから議事録が「余白」「時間」「忍耐」を強調するのです。
■ なぜ金利・株・ドルが同時に整合しないのか
整合しないのは、市場が“ひとつの物語”で動いていないからです。
市場は今、成長ストーリーではなく、制度・信用・持続性を同時に値付けしています。
その結果、従来の「金利差」「景気一本足」の説明が効きにくくなります。
本来、教科書的にはこうなりがちです。
- 金利が高い → ドル高
- 金利が高い → 株は重い
- 金利が高い → 金は重い
でも現実は、そう簡単ではありません。
いま市場が見ているのは、金利の“水準”だけではなく、その水準がどれだけ持続可能かです。
ここで大事なのは、金利そのものより「金利の意味」が変わる瞬間です。
① 金利の意味が「強さ」から「負担」へ揺れている
金利が高いことは、短期的には強さの象徴です。
しかし長期化すると、負担になります。
市場は今、こういう二層を同時に見ています。
- 表面:高金利=景気はまだ耐えている
- 裏面:高金利=どこかが遅れて歪む
だから、金利が高止まりしても、安心一色にはなりません。
② 株高は「景気楽観」ではなく「資金の置き場所」の論理で起きる
株が高いからといって、市場が全面的に強気とは限りません。
特に指数主導の相場では、次のようなことが起きます。
- 崩壊は見ていない
- でも信用を一極集中させたくない
- それでもリターンは必要
結果として、株式の中でも「置ける場所」へ資金が寄りやすい。
(大型・高流動性・指数寄与度が高いところに寄る)
③ ドルは「捨てられていない」が「持ち切れない」局面になり得る
ドルが弱含む局面は、必ずしも「米国が弱いから」だけではありません。
市場がドルを見るときの軸は、
- 成長
- 金利差
だけではなく、 - 制度の安定性
- 政策の予見可能性
も含まれます。
ここは政治批判ではなく、市場心理の話です。
市場は、政治と制度の距離が話題になる局面では、
“制度リスクをゼロではないもの”として織り込み直すことがあります。
そうなると、
- ドルを捨てるほどではない
- でも全力で持ち続ける理由も薄れる
という、微妙な状態が生まれます。
■ 市場の“同時多発”現象
- 株高
- US10Y高止まり
- ゴールド高
- ドル安
これがずっと継続しています。何が起こっているのか?
これは信用の再配分なのではないでしょうか。
信用の再配分を思考してみる
市場は崩壊を織り込んでいません。
しかし「100%の信頼」を一箇所に置くことも避けています。
その結果、複数の資産に“同時に”意味が乗り始めています。
この同時多発は、感情で言えば「恐怖」ではありません。
もっと静かなものです。
「確信を持ち切れない」という状態です。
市場は今、だいたいこういうバランスで動いています。
- FRBを100%信じていない
- でも疑い切ってもいない
- ドルを捨てていない
- でも全力では持っていない
これが“信用の再配分”です。
なぜゴールドが強くなりやすいのか
金は「制度の外側」にある資産です。
つまり、市場が「制度を疑う」のではなく、
制度を信じつつ“逃げ道も確保する”ときに買われやすい。
ここが重要で、金高=終末論ではありません。金高=「保険」です。
なぜ株も買われるのか
崩壊を見ていない以上、リスク資産をゼロにはできません。
むしろ、現金だけで待つのは機会損失になりやすい。
だから
- 株は持つ
- ただし集中しない
- 同時に保険(金)も持つ
という“二枚腰”が成立します。
なぜUS10Yが高止まりするのか
債券市場が言っているのは、ざっくりこうです。
- インフレが完全に終わったとは言えない
- FRBが急いで利下げする理由も薄い
- だから利回りは高い位置に居場所がある
つまり、債券市場は「時間」を買っています(利下げを急がせていない)
では、なぜドルが方向性を失いやすいのか
ドルは“通貨”であり、同時に“制度への投票”でもあります。
市場が「米国は強いが、確信し切れない」と感じる局面では、ドルは一方向に走りにくい。
その結果、株高・金高・ドル弱含み、という形が成立し得ます。
ここまでのまとめ方
今の市場は崩れていません。
しかし、整合もしていません。
それは矛盾ではなく、市場が「水準」ではなく「持続性」と「信用配分」を値付けしているからです。
崩壊を見ていないので、株は買う。
しかし、確信が持てないので金も買う。
利下げを急がないので、金利は高止まりする。
そしてドルは、全力で持たれにくくなる。
■ 市場が見ているのは“水準”ではなく“ズレ”
市場は金利の高さそのものを問題にしているのではない。
インフレの水準そのものを恐れているのでもない。
見ているのは、「数字同士のズレ」が広がっていないか、である。
いま多くの解説は、水準で語られます。
- CPIは2%台
- 失業率は4%台
- 10年債は4%前後
- 株は史上高値圏
一見すると、どれも“壊れていなません”
しかし、市場は単体の数字を見て動くわけではありません。
市場が反応するのは、「関係性」が崩れた瞬間です。
① CPI vs 賃金
CPIは鈍化傾向。一方で、賃金は緩やかだが粘着的。
このとき市場はこう考えます。
- インフレは落ち着いている
- しかし労働市場はまだ締まっている
- ならば利下げを急ぐ理由は弱い
ここまでは整合しています。
問題は、もし賃金が再加速したらどうなるか。
あるいは、賃金が急に崩れたらどうなるか。
CPIと賃金のテンポがズレ始めた瞬間、FRBの判断は一気に難しくなります。
市場はそこを先に見ています。
② 雇用 vs 小売
雇用はまだ強い。しかし小売は横ばい、住宅は減速。
つまり
- 人は働いている
- しかし消費は伸びない
この構図が続くと、何が起きるか。
企業は価格を維持しづらくなり、利益率が圧迫される可能性が出てきます。
ここで初めて、株式市場の論理と実体経済の論理がズレます。
市場は今
雇用が崩れていないから安心。しかし消費が鈍いことは気になる
という、二層構造の中にあります。
③ 平均 vs 地域差
発表された指標を見ると、全米平均では整っています。
しかし先に書いた通り、ベージュブックを見ると
- 中西部:製造減速
- 西部:住宅鈍化
- 南部:賃金圧力
- 東部:サービス強いがコスト上昇
平均は整っている。しかし地域は整っていない。
このとき、市場はどう考えるか。
FRBは平均を見る。
企業と家計は地域で生きている。
このズレが拡大すると、「平均の安定」と「現場の体感」が乖離します。
そしてその乖離が大きくなるほど、政策は遅れて効くことになります。
④ 金利 vs 株
金利は高止まり。それでも株は高値圏。
これは単純な楽観ではありません。
市場はこう判断しています。
- 金利は高いが、まだ耐えられる
- 利下げは急がれない
- しかしクラッシュも見ていない
つまり、金利と株の間に「即時の衝突」は起きていない。
しかし金利が長期化した場合、企業財務や住宅市場にじわりと効いてきます。
市場は“今”ではなく“時間差”を見ています。
時間経過が敵になるか?味方になるのか?金利が高ければ、結果はおのずと出てきます。
⑤ ドル vs ゴールド
ドルが全面的に強いわけではない。しかし崩れてもいない。
一方でゴールドは保険的に買われる。
これは恐怖ではありません。
市場は今
- 制度を疑っているわけではない
- しかし制度リスクをゼロとは置いていない
という、非常に微妙な均衡にいます。
ズレが意味するもの
ズレが小さいうちは、市場は水準で安心できます。
しかしズレが拡大すると
- 政策の副作用が強まる
- 判断が遅れる
- ボラティリティが増す
だから市場は、いま崩壊を見ていません。しかし完全な安心もしていません。
ミニまとめ
いま市場が見ているのは
高いか低いか、ではない。
強いか弱いか、でもない。
「数字同士の関係が崩れていないか」それだけです。
そして現時点では、
崩れてはいない。
しかし、揃ってもいない。
この“中途半端な整合”こそが、いまの相場の正体でなのです。
■ ドル一強の終焉か?
ドルは崩れていません。
しかし「ドル一択」という物語は弱まりつつある可能性があります。
これはクラッシュではなく、支配力の再調整である、と仮定をしました。
この回収に向かいましょう。
まず、言葉を整理しておきます。
ドル崩壊とドル一強の終焉は、まったく違います。
- 崩壊 → 信認の消失、急落、システミック危機
- 終焉 → 相対的優位の低下、選択肢の増加
今の相場は、前者ではありません。むしろ、後者に近い。
①「ドル一択」の時代とは何だったのか
ドル一強とは、
- 金利は高い
- 経済は強い
- 他国は弱い
- 安全資産としても選ばれる
この四拍子が揃った状態でした。
つまり、
成長資産としても、防御資産としても、両方でドルが選ばれる
という構図です。これが“支配力”です。
② 今、何が変わりつつあるのか
現在の構図は少し違います。
- 金利は高い
- 経済は減速感も見える
- ゴールドも同時に強い
- 株は高いがドルは伸びない
このとき市場はどう判断するか。
ドルを捨てているわけではない。
しかし、ドル“だけ”を持つ必要も感じていない。
つまり
ドル一極集中からリスクの再配分へ
という動きです。
③「政治変数」との距離
ここは断定はしません。政治変数は、曖昧だからです。
市場は、政治を評価しているのではありません。
市場が見るのは「制度の安定性への感応度」です。
もし仮に
- 中央銀行の独立性
- 財政の持続性
- 金融政策の予見可能性
に対する感応度が高まれば、ドルは“絶対資産”ではなくなります。
それは不信ではありません。再評価です。
④ だからこそ冷静に言う
ドル崩壊ではない。ドル危機でもない。
しかし
「ドル一択」の物語は、わずかにトーンが変わり始めている可能性
ここが本質なのではないでしょうか。
■ US10Yのじわ下げ
高止まりしているUS10Y。FOMCで3会合連続で利下げが行われても、4%台をキープしていました。2026年の第2週→3週に向けて、じわ下げとなり 4.2% → 4.0%。
数字は小さい。
しかし、意味はゼロではないと思います。
まず前提。
10年債が4.0%台にあること自体、歴史的には高水準です。
したがって、これは緩和相場ではありません。
では何が起きているのでしょうか。
可能性① 成長減速の織り込み
雇用は強いが、消費と住宅は鈍い。
このとき債券市場は
インフレ再燃より成長の減速リスク
を、少しだけ重く見始めます。
それが“じわ下げ”という形で現れます。
可能性② ポジション整理
ドルロング、金利高止まりを前提にしたポジションが溜まっていた場合、その整理だけでも金利は下がります。
これはトレンド転換ではありません。調整です。
可能性③ インフレ再加速確率の低下
CPIは鈍化傾向。賃金もピークアウト気味。
このとき
「再び5%台へ」というシナリオの確率が下がる
それだけでも、10年債は静かに買われます。
まだ危険ではない理由
本当に危険なのは次の組み合わせです。
- クレジットスプレッド拡大
- 金利急低下 × 株急落
- 流動性の急収縮
今、そこではありません。そこに達していない、という書き方が正しいかもしれません。
株は高値圏。クレジット市場も崩れていない。
つまり、前記した様に債券市場も
債券市場はパニックではなく、時間を買っている
という状態だと言えるのです。
ここまでの整理
- ドルは崩れていない
- しかし独占的支配力はやや後退
- 10年債は急落ではない
- しかし成長減速リスクは意識され始めている
これはクラッシュの前兆ではありません。
しかし
完全な楽観相場でもない
ということです。
■ 整理:崩壊ではなく“再配分”の局面
市場は壊れていない。
しかし、重心を静かに移している。
今起きているのは崩壊ではなく「信用の再配分」である。
ここまでの違和感を並べてみます。
- FOMCは割れている
- ベージュブックは地域差だらけ
- 株は高い
- US10Yは高止まりしつつじわ低下
- ゴールドは強い
- ドルは伸び切らない
普通なら、どれかが崩れて整合するはずです。
しかし、崩れない。
なぜか?
① 市場は「方向」ではなく「配分」を調整している
これまでの相場は比較的単純でした。
- インフレ上昇 → 金利上昇 → ドル高
- 景気減速 → 金利低下 → 株安
しかし今は違います。
- インフレは鈍化傾向
- 景気は崩れていない
- 政策は急がない
このとき市場はどう動くか。
「どれが勝つか」優先順位を決めるのではなく、「どれにどのくらい置くか」というリスク分散で調整をします。
だから
- 株を全部売らない
- 債券も全部売らない
- ドルも全部持たない
- ゴールドも少し持つ
という動きになります。
③ 信用の再配分とは何か
ここが本質です。
市場は今
- FRBを100%信じていない
- でも疑い切ってもいない
- ドルを捨てていない
- でも全力では持っていない
これは不信ではありません。過信をやめた状態です。
③ なぜ整合しないのか
整合しない理由は単純です。
世界が単純ではないからです。
- 地域差がある
- 政策は分裂している
- インフレも完全には消えていない
- 成長も完全には止まっていない
均された数字は、一瞬は安定に見えます。
しかし、内部は揺れている。
だから相場も「均されない」。
④ では、これは危機の前触れか?
今のところ違います。
危機というは「同時崩れ」です。
- 株急落
- クレジット拡大
- 金利急低下
- ドル急落
この連鎖は起きていません。
むしろ今は
同時分散
です。
これはパニックではなく、リスク管理です。
⑤ ドル一強終焉との接続
ドル崩壊ではありません。
しかし、「ドル一択」という物語は、市場の中で少しだけ薄まっています。
それは支配の崩壊ではなく、選択肢の復活です。
⑥ 違和感の正体
感じていた違和感は、「何かが壊れそう」ではなく、「全部が正しいわけでもない」という状態でした。
それは混乱ではありません。過渡期です。
最終結論
今の市場は
- 楽観でもなく
- 悲観でもなく
- 無秩序でもなく
再配分の途中段階にあると言えるでしょう。
崩壊ではありません。
しかし、「ドル一強」の様な完全な安心でもない。
だから整合しない。
整合しないこと自体が、今の相場の整合性なのではないか?と逆説的に理解した方が良さそうです。
そして10年後。
もしこの局面が
- ドル支配力の静かな調整期だったのか?
- それとも大きな転換点の前触れだったのか?
その答えは歴史が出します。
しかし少なくとも今日、市場は壊れていません。
ただ、資金を確実に再配分し、軸足・重心を静かに動かし始めているのが「トレンド」なのは、まぎれもない事実です。
■ 今後、マーケットが変化する上で注意すべきポイント
崩れるかどうかを見るのではない。
“バランスが崩れ始める瞬間”を見る。
変化はいつも、水面下から始まる。
今は再配分の局面です。だからこそ、何を観測するかが重要になります。
① US10Yの質的変化
4.2 → 4.0はまだ危険ではありません。
しかし注意点は水準ではなく、
- 金利低下 × 株急落
- 金利低下 × クレジットスプレッド拡大
この組み合わせが出た時。
それは「安心の金利低下」ではなく「逃避の金利低下」になります。
② クレジットスプレッド
今はまだ落ち着いています。
しかしここが広がり始めると、再配分は“防衛”へ変わります。
信用の縮小が始まるかどうか?
ここは最重要観測点です。
③ ドルのトレンド
ドル崩壊ではありません。
しかし
- 実質金利が横ばいなのにドルが下がる
- 地政学イベントでもドルが買われない
この状態が続けば、「ドル一強の物語」はさらに弱まります。
④ ゴールドの動き
ゴールドが強いのに株も強い。
これは危機ではなく、ヘッジの常態化です。
しかし
- ゴールド急騰 × 株急落
この同時発生は警戒信号。
今はそこではない。
⑤ ベージュブックと指標の乖離
平均値が安定しているのに地域差が拡大する。
この状態が長引くと、政策は難しくなります。
「均された数字」が現実を覆い隠していないか。
ここは継続観測。
■ 結論:市場は「水準」より「持続性」を見ている
市場は恐怖していない。
しかし、全面的にも信じていない。
それが今の静かな再配分である。
水準は高い。
- 株は高値圏
- 金利は高止まり
- ゴールドは強い
- ドルは方向感を失いつつある
しかし市場が見ているのは“今どこにいるか”ではありません。
この状態がどれだけ続くかを見ています。
- 高金利は持続できるのか
- 成長は横滑りで済むのか
- 政策の余白は保てるのか
水準より、持続性。
強さより、持久力。
これが今のマーケットの視点です。
最後に。
違和感は消えましたか?
今は崩壊の前ではない。
過信の終わりに近いだけです。
市場は静かです。
しかし内部では、静かに再配分が進んでいる。
そしてそれを読み取れる人だけが、“水準”ではなく“構造”を見ることができます。
■ 出典
【FOMC関連】
- Federal Reserve
- Minutes of the Federal Open Market Committee, January 2026
- Board of Governors of the Federal Reserve System
- FRB要人発言
- Michelle W. Bowman(FRB副議長)講演(2月16日・19日)
- Michael Barr(FRB副議長)発言(2月18日)
- Mary Daly(サンフランシスコ連銀総裁)発言(2月18日)
- Raphael Bostic(アトランタ連銀総裁)発言
- Neel Kashkari(ミネアポリス連銀総裁)講演
- Austan Goolsbee(シカゴ連銀総裁)発言
- Lorie Logan(ダラス連銀総裁)発言
- Alberto Musalem(セントルイス連銀総裁)発言
【ベージュブック】
- Federal Reserve
- Summary of Commentary on Current Economic Conditions (Beige Book), January 2026
【米主要経済指標】
- 米消費者物価指数(CPI)
- U.S. Bureau of Labor Statistics (BLS)
- 雇用統計(Nonfarm Payrolls, Unemployment Rate)
- U.S. Bureau of Labor Statistics (BLS)
- 雇用コスト指数(ECI)
- U.S. Bureau of Labor Statistics
- 小売売上高
- U.S. Census Bureau
- 中古住宅販売
- National Association of Realtors (NAR)
【金利・市場データ】
- 米10年国債利回り(US10Y)
- U.S. Department of the Treasury
- 市場価格データ:
- Bloomberg
- Reuters
- Investing.com
- CME Group
【IMF関連】
- International Monetary Fund (IMF)
- Japan Article IV Consultation Reports
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