カテゴリ:入門シリーズ| 2025年8月17日(JST)
当ブログではFRB議長候補を追っかけていて、記事もよく読んで頂いております。
そもそもですが、FRBとは何でしょう?ニュースでよく聞く「FRB」「Fed」「FOMC」。
本記事は、金利入門・為替入門につながる前提の基礎として、米国の中央銀行の仕組みと役割をやさしく解説します。
■ FRBとは?
FRB(Federal Reserve Board/連邦準備制度理事会)は、アメリカの「日本銀行」に相当する中枢機関です。
一方でニュースではFed(又はFRS)(Federal Reserve System)という表現も登場します。これは「連邦準備制度全体」(理事会+12地区連銀)を指す広い言い方です。
実務的には「FRB=アメリカの中央銀行」と理解して問題ありません。
歴史的背景
FRBは1913年に設立。きっかけは1907年恐慌など金融パニックで、当時は取り付け騒ぎが頻発していました。大恐慌(1929年)では対応が後手と批判され、以降は「危機の最後の貸し手」としての役割を強化。
近年ではリーマン・ショック(2008年)やコロナ危機(2020年)で大規模な資金供給を行い、市場の安定に重要な役割を果たしました。
■ FRBの仕組み(3つの柱)
- 理事会(Board of Governors)
ワシントンD.C.にある本部。大統領が任命し上院が承認する7名の理事で構成され、ここから議長・副議長が選ばれます。 - 地区連銀(12の連邦準備銀行)
ニューヨーク、シカゴ、サンフランシスコ等の地域中枢。
とくにニューヨーク連銀は、国債売買や為替介入など市場オペレーションの実務を担い、NY連銀総裁はFOMCの常任副議長という特別なポジションです。 - FOMC(Federal Open Market Committee/公開市場委員会)
金融政策の最高意思決定会議。理事会メンバー+地区連銀総裁5名が投票に参加し、政策金利や資産購入・縮小などを決めます。
■ FRBの役割
- 政策金利の調整:景気過熱時は利上げ、減速時は利下げ。目標は物価の安定(インフレ率2%)と雇用の最大化。
- 金融機関の監督:銀行の健全性をチェックし、金融システムの安定を守る。
- 危機対応:市場が混乱した際の最後の貸し手として流動性を供給し、連鎖的な信用不安を防ぐ。
■ 議長・理事はどう選ばれる?
・議長・副議長・理事は、大統領が指名し、上院が承認して就任します。
・理事の任期は14年、議長・副議長は4年(再任可)。
・地区連銀総裁は各連銀の取締役会が選出し、理事会の承認を受けます。
・NY連銀総裁はFOMCの常任副議長として政策の中枢に位置します。
👉 NY連銀総裁は必ずFOMCの副議長 という特別扱い。これは、国債・為替の取引がニューヨークに集中しているためです。
なぜ「越権」議論が起きるの?
金利や資産購入の最終判断はFOMC(FRB)の権限です。財務長官(行政府)が利下げ・利上げに踏み込む発言をすると、FRBの独立性に関わる「越権的」だと受け止められやすいのはこのためです。
■ FOMCの運営(会合・ドット・議事録)
- 会合回数:原則 年8回(必要に応じて臨時もあり)
- ドットチャート:参加者の見通す政策金利を点で示す図。市場は中位値や変化に注目。
- 声明・記者会見:文言の微妙な変化が相場を動かすため、為替・株・債券が敏感に反応。
- 議事録(Minutes):会合後約3週間で公表。メンバーの議論やリスク認識が読み取れる。
■ FRBと日本銀行の違い
- 使命:FRBは物価と雇用の二重の使命(デュアル・マンデート)。日銀は主に物価の安定。
- 組織:FRBは理事会+12連銀のネットワーク型。日銀は単一機関が全国をカバー。
- 市場オペ:FRBはNY連銀が実務の中枢。日銀は本店・支店体制で執行。
■ FRBと政治(独立性)
原則としてFRBは政治から独立し、データに基づいて判断します。ただし、大統領や財務省の発言は市場心理に影響するのも事実。
そのため、制度としての独立性(FOMCによる合議)と、人事・発言の政治的圧力の両方を理解してニュースを読むのがポイントです。
■ FRBと金利・為替のつながり
- 金利 → 為替:利上げはドル高(円安)要因、利下げはドル安(円高)要因になりやすい。
- 金利 → 株・債券:利上げは割引率上昇で株に逆風、債券価格は下落。利下げはその逆。
この前提を押さえておくと、ニュースで出るCPIやPPIの数字、そして利下げ/利上げ観測が為替や株・債券にどう波及するかが読み解きやすくなります。
■ まとめ
- 「FRB」=理事会、「Fed」=制度全体、「FOMC」=政策を決める会議。
- 議長・理事は大統領指名+上院承認。NY連銀総裁はFOMC常任副議長。
- FRBの判断は金利・為替・株・債券へ直結。ニュースを読む基礎体力に。
次は、実務に直結する「金利入門」や「為替入門」を読むと、日々のニュースがもっと立体的に理解できるはずです。
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